恵比寿日和

ベツレヘムの星

幼い頃を思い出すとき、鮮やかに蘇る花がある。

花韮(はなにら)。

遊び場だった河原の土手に、それは、星のような白い花を群れ咲かせていた。

わたしたちは整備された公園ではなく、土手で遊んだ。

そこは子供たちの不思議な冒険や空想の棲み家だった。

花の名前の元になった独特の香気は春の草いきれと相まって、子供だった頃の記憶に深く染みついている。

英名、スプリングスターフラワー。オオアマナと共に「ベツレヘムの星」という呼称があると聞く。

ある日、そのベツレヘムの星が咲く土手の、大きな石の影に美しく光るものを見つけた。

それは、昨日夜空を流れた星たちのひとつだった。

わたしはそれを拾うと、手から星がこぼれ落ちないように、固く固くギュッと握りしめて、家まで駆けて帰った。 早く母に見せたくて息が切れるまで一生懸命走った。

「星を見つけたよ」 母の前で手の平を開くと、星は潰れて錆びた鉄屑になっていた。

あれは星の名を持つあの花が、幼いわたしに見せた夢だったのだろうか。

花韮がいつからか我が家の庭先に咲くようになった。

あの夢を久しぶりに思い出した。 

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