恵比寿日和

桜考

日本人にとって、桜ほど再生の徴にふさわしい花はないだろう。

昨年の震災の後、私たちのサイトにも再生への祈りを込めて、那須在住の作家、RARIさんに描いていただいた桜の花の絵を掲載した。

今年のアカデミー賞に、東日本大震災をテーマにした短編ドキュメンタリー「津波そして桜」がノミネートされた。
監督のルーシー・ウォーカーさんは、「一輪一輪は目立たないけれど、群生して咲いたときの桜の美しさが、震災から立ち上がる日本人の姿に重なった」といった趣旨のことを話されていた。

桜といえばソメイヨシノだが、これは一つの個体から接ぎ木によって増やされた同じ遺伝子を持つクローン樹で、そのため「同じ環境におけば同じ花を同じ時期に咲かせ、群植すれば霞か雲かの風景を生み出す」と山本紀久氏の「造園植栽術」にある。
一方、ヤマザクラは、大半はその地に自生する種子から育った実生の個体で、異なる遺伝子を持つ。ヤマザクラについて山本氏は「異なる花や葉の色をもつ樹々が、微妙な時間差をもって山々を彩る風景もまた圧巻である」と語っている。

平安の昔から、我が国で「花」といえばそれは「桜」を意味していた。
しかし、遠く古人(いにしえびと)が見ていた桜は、現代風の一斉に開花して散る桜ではなく、遠い山辺に微妙な色の濃淡を描きながら次々と咲く桜の風情であったことだろう。

東京の開花宣言も、もうまもなくである。
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