恵比寿日和

京都のこと 町家のこと 2 風情

古今和歌集に

秋来ぬと目にはさやかに見えねども
             風の音にぞおどろかれぬる       藤原敏行

という有名な歌がある。

そういえば、俳句にも

秋来ぬと合点させたる嚔(くさめ)かな

という蕪村の句があった。

つくづく、季節の移ろいは気配で感じるものであったか、と思う。

町家には、表から裏へと通じる土間があって、これを「通り庭」と呼ぶ。
「通り庭」は人が行き来するとともに、自然が往来するところでもあった。

風が通り、光が抜ける。

今で言う庭は「奥庭」や「坪庭」と呼ばれ、時に「壺中の天」とも称された。
棕櫚竹がサワサワと鳴り、葛布の暖簾がかすかに揺れる。

そこに住む人の暮らしぶりが家に染みこんで景色をつくる。

要素や機能に還元できない行間ににじみ出るもの。
日本人はいつも、風情の中に美しさをみつけてきた。
ブログ印_MIY.jpgのサムネール画像

 
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写真上: 「京都の意匠」 建築資料研究社
   下: 「京町家」 淡交社
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