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活動レポート&里山便り(2012年2月)

里山活動レポート:その他

『サシバの里』シンポジウム報告 (2012年2月 8日)

昨年2月20日の栃木県市貝町でのサシバの学習会に引き続いて今年も『サシバの里』
シンポジウムが1月28日に市貝町で開催されました。

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(昨年の「学習会」の様子はこちら

 

5×緑では、このシンポジウムを主催したNPO法人オオタカ保護基金と連携して、
今年からサシバが棲み続けることができる環境保全活動を本格的に応援していく
ことにしていて、その具体的な取り組みの検討を始めたところです。
みなさんに参加・応援していただける活動も計画する予定なので、是非ともご参加下さい。
(具体的に決まりましたら、ご案内いたします。)

 

■基調講演

今年のシンポジウムでは、はじめに基調講演として、市貝町で2000年からサシバ
の生態調査を続けてこられた東京大学大学院生物多様性科学研究室特任研究員の
酒井すみれ先生からサシバの詳しい生態のお話を伺いました。
とても興味深い内容でした。

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・サシバは4~7月に市貝町で繁殖し、秋には20~30日かけて2,500km南に移動して
 南西諸島や沖縄(石垣島など)で過ごす。中にはフィリピンまで渡る個体もある。
 春は3月中旬に沖縄・石垣島を飛び立ち、4月中旬に市貝町に到着する。
・現在は絶滅危惧種に指定されているが、人が管理することによって維持されてきた
 里山で繁殖する密度が高い。
・里山の中でも特に水田や林が入り組んでいる谷津田のような環境を好み、
 水田・水路・ため池などの水辺環境に畦・草地・林などが加わっていることが大事。
・その理由として、営巣場所と採餌場所の両方が確保されている必要があるため。
・サシバは4月に巣作りをはじめて、5月に抱卵する。この頃は水田や畦で主にカエルや
 ネズミなどを捕らえて食べる。
・6月上旬頃まではカエルやヘビなどをよく捕まえているが、下旬になると水田や畦で
 それらが減ってくるので、林でヤママユガの幼虫などの昆虫を捕まえるようになる。
・調査の結果、雛3匹で1ヶ月の間に15kgの餌を食べた。繁殖には相当量の餌の存在が
 必要になる。餌となる生き物類が大量に生息できる環境が必要だ。

 

以上のように、サシバは農の営みによって維持されてきた里山の多様な環境に
支えられて生活してきた「里山を象徴する種」のようです。
ところが、サシバが最も好む谷津田は、営農条件が悪いために放棄されやすく、
最初に休耕田になってしまうのです。
休耕田になってしまうと、水が張られなくなるのでカエルは産卵できなくなり、
また周りの畦なども管理されなくなって草丈も高くなり、餌を見つけにくくなってしまいます。
餌が見つけにくくなると営巣場所としては適さなくなるので、サシバが減っていってしまいます。
また、主な餌となるカエルは、水田と林を移動するので、移動経路となる水路の
形態がとても大事で、コンクリートで固められるとカエルは減ってしまうようです。

 

サシバを保全していくには、水田(谷津田)と林がセットであって、かつその環境が
管理され続け、そして水田と林を生き物が自由に行き来できるような状態で
維持されていることがとても大切なようです。


■活動報告

続いてオオタカ保護基金副代表の野中純さんから「市貝町におけるサシバの保全
活動」の報告がありました。
オオタカ保護基金は、2002年から市貝町で調査を開始していて、生息数や生息環境の
調査に加えて繁殖成功率なども調べているようです。そして、サシバの生息状況と
営農地の特徴から地域を区分して、そのタイプ毎に保全のためのプランなども
提案されているようです(詳細は昨年の「学習会」の報告参照)。

また昨年から、市貝町内で休耕田となって放置された谷津田を借り受けて、外来の
セイタカアワダチソウを除去したり草刈り作業を行って、さらに水田に水を張ったりして、
サシバが生息できる環境づくりに取り組んでいる様子が紹介されました。
その活動の中では、自然観察会なども開催して、サシバ保全のための普及啓発活動も
行っているとのことです。
※5×緑では今年この谷津田での活動を支援していく予定です。



■スペシャルトーク

そして今年は、俳優で日本野鳥の会会長の柳生博さんをお招きして、
「柳生博さんとサシバ、里山、農業について語ろう」というスペシャルトークがありました。
柳生さんは、兵庫県豊岡市でコウノトリの野生復帰の取り組みを行っている
「コウノトリファンクラブ」の会長でもあることから、そちらの事例なども交えながら、
サシバの保全やそれを活かしたまちづくりについて、様々なお話を楽しく聞
かせて下さいました。市貝町の人たちも勇気づけられたことと思います。

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主な内容は以下のとおりです。


・日本人は元々自然と折り合いをつけながら暮らしてきた。生き物と仲良く暮らしてきた。
 ところが我々の先輩達が生き物に厳しく接してきた。そのため、たくさんのものを
 失ってしまった。何とか取り戻したい。
・子供の頃、野良(のら)仕事をやるようによく言われた。野良仕事とは「野を
 良くする仕事」でとても大切だ。
・市貝町の谷津田は最高だ!すばらしい財産だ!教育の場として最適である。
・市貝町は人間の原点のような暮らしの営みができる。都会から子供達を呼んで、
 自然学校のようなものをやれたらよい。それにはインタープリテーションが大事だ。
 インタープリテーションとは、科学的に教える・伝えるということで、科学的に案内し、
 生き物の通訳をするようになれたらよい。「サシバの里」として教育ができるように
 なれたらよい。
・コウノトリの野生復帰の取り組みを行っている豊岡市では、農薬を使わない、
 化学肥料もなるべく使わない、冬でも田んぼに水を張る、という「コウノトリを育む農法」を
 やっていて、コウノトリの生息に配慮した農業を実施している。
・稲を育てる途中で田んぼから水を抜く「中干し」を行うとオタマジャクシが死んでしまう。
 この中干しを2週間遅らしてオタマジャクシがカエルになるのを待つことはできないだろうか?
 豊岡市ではこれを実施して、害虫のカメムシをカエルがたくさん食べてくれたというメリットがあった。

 


■パネルディスカッション

最後は「『サシバの里』づくりを進めるために」というテーマで、柳生さん、地元の
JA直売会会長の関沢さん、市貝町に移り住んで無農薬で野菜づくりに取り組
んでいる小野寺さん、町長の入野さん、オオタカ保護基金会長の遠藤さんによる
パネルディスカッションが行われて、「サシバの里づくり」に向けて大きく一歩
踏み出す議論が展開されました!
(コーディネーター伊村さん:栃木県農政部経営技術課)

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〈関沢さん〉
・谷津田では殺虫剤を使用せずに田植えをしようとしている。
・個人で取り組むのではなく、営農組合などグループで進めるとより大きな効果
 を期待できる。


〈小野寺さん〉
・昔の農法で稲を作っている。半分イベントだが、田んぼに直接種を播いてから
 田植えをしている。この農法だと、虫が来て、鳥が来て、動物が来る。
・農産物を買ってくれる人達を呼んで田植えイベントや観察会をやっている。
 子供達に自然とふれあう原体験をさせてあげたい。
・このような活動をしていると同じような考えを持つ人達の情報がよく入ってくる。
 市貝町に移り住んで農業をやりたいという声は多く聞く。行政として、そのような
 人達を支援する施策はできないだろうか?


〈遠藤さん〉
・サシバの保全のために借りた谷津田で草刈りをした時に、オミナエシやヤマラッキョウ
 などの野の花を見て、シンプルに幸せを感じられた。市貝町はとてもすばらしいところだ。


〈柳生さん〉
・経済と環境の共鳴を目指そう!コウノトリを育む農法のお米は普通の1.7倍の
 金額で流通している。その農法で酒米を作ってお酒も造っている。
・教育にも力を入れてお金を取れるようにできたらよい。
・インタープリテーションをみんなでやって欲しい。ナショナルトラスト的なことも
 考えつつ、「サシバの里」として教育も進めていって欲しい。


〈伊村さん〉
・西の豊岡(コウノトリ)、東の市貝(サシバ)、と言われるようなサシバの里
 づくりができたらよい。

 

そして最後に入野町長が、"サシバの里の政策が統一されていないので、しっかりと
人事も含めて係を作り「サシバの里づくり」を本格的に進めたい"、と宣言されました。

2012-02-08 (Wed)