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活動レポート&里山便り(2010年6月)

森の未来に出会う旅 その2 (2010年6月28日)

先月の記事には人工林の団地での様子をレポートしましたが
今回は、人工林から伐り出された原木の市場の様子です。

山を降りた私たちは、嶺北木材市場へ向かいました。

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山から伐り出された木は、市場に集められ、取引されます。
全国各地のハウスメーカーなどからも買い付けにくるそうです。

嶺北の杉の特徴は、中心部のうすいピンク色。(写真では色が出ていないのですが)
このピンクの杉は、水に強いので、お風呂場など水回りによく使われるそうです。

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そして、ここに集められた原木には、「SGEC」のラベルが貼られています。

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SGECは、日本独自の森林認証です。(国際的な森林認証としてはFSCが有名です)
「緑の循環」認証会議という独立した第三者機関によって
持続可能な森林経営、管理を認証しています。

嶺北では、地域全体でこのSGEC認証の取得を目指し、平成19年に
約4千ヘクタールの認証取得と、認証材を扱う事業体の認定を取得しています。

このような認証取得を目指す背景には、もちろん環境に配慮した
森林管理を徹底するという目的もありますが、市場での競争力を高めたい
という意図もあります。

木造建築が一般的であった昔に比べると、国産の木材の需要は圧倒的に
減少しています。また、安価な外国産の木材輸入が一般化したことにより
国産木材の市場価格も下落しています。これもまた、林業が低迷している
大きな原因です。山から気を伐って運び出すには、コストがかかります。
それを市場で売ったとしても、コストを回収できなければ
伐るよりも放置したほうがよい、ということになってしまいます。

これは本当に頭の痛い問題です。
嶺北でも、なんとかして木材のフェアトレードが可能にならないかと
いろいろと新しいアイデアを模索しているところです。


その1に書いたことをもう一度思い出してみます。
このまま人工林を放置すると、山はどんどん死んでいきます。
山に宿る美しい生物たちの世界も失われていきます。
土砂災害などの危険性も増加します。
今の日本では「木は切らなくてはいけない」のです。

なのに今、国産木材は市場で優位な立場にありません。

山の仕事をする嶺北の皆さんが一生懸命新しい道を模索するのと並行して
消費者である私たちも新しい道を考えてみる必要があるのでは、と思います。
家具を買うとき、家を建てるとき、部屋を選ぶとき、値段や見た目だけで
なく、そこで使われている素材のことを思い浮かべてみる余裕が欲しいです。
その素材の背景にあるもの、それを選ぶことの意味。

個人的な話になりますが、実家のリフォームにあたり、大工さんに
高知県産の杉と檜を指定して、柱や床板に使ってもらいました。
杉は心地良い温かさが伝わってくる木材なのですが、そこに
手を触れていると、将太くんに連れていってもらった「良い森」の
風景を思い出すことができます。

5×緑の里山ユニットも、眺めていただくことで、日本人の心の風景である
里山を思い浮かべてホッとしていただけることを願って作られています。
国産木材の家や家具も同じように、そこに住む人、使う人の心に、
日本人が古代から受け継いできた山の風景が宿るのではないかと思います。


次回は、製材工場の様子や、嶺北の木材を売り出すための
新しい取り組みについてレポートしたいと思います。


取材・執筆:宮垣 翠 (5×緑スタッフ)





2010-06-28 (Mon)

里山活動レポート: 畑

畑の棚田 (2010年6月 2日)

滋賀県高島町の畑地区は私たちの関西でのアゼターフの生産の拠点ですが、
この5月で約4年間続いた活動を中止することになりました。


理由は、地主の澤井さんがご高齢となり、息子さんに代替わりする日が近くなってきたこと、
それと畑の管理をお願いしていた棚田保存会の会長の宮脇さんも76歳とご高齢になり、
これ以上のご負担をおかけするのも、忍びなくなってきたことがあげられます。


この4年間には植生調査はもちろん、一緒に草ひきを行い、その都度、生育状況を確認し、
これからようやく本格的な生産体制に入れると思っていただけにとても残念。
とはいえ、私たちも遠隔地でなかなか頻繁にうかがうこともままならず、中止の判断も
やむをえないものとなりました。


5月の連休明け、最後のご挨拶と畑の状況を確認するため、現地に向かいました。
この時期は、ちょうど田植えが終わったばかりで、あたりはまさに水鏡。
澄み渡った空に薫風が吹きぬけ、それは気持ちのよい里山の風景が広がってきます。


76歳とは思えぬ宮脇さんの達者な運転で、現地に到着。まず、何はさておき、棚田へと向かいました。
私たちが伺うのは、昨年の夏以来約一年ぶり。畑に入って驚いたのは、一気に
帰化植物が増えていたことでした。
原因は、周辺からの侵入が防げなかったことによると思われますが、なかなか草刈が
追い付かず、この春に一気に芽吹いたものと考えらえます。ただし、それでも畑の一部、
加えて棚田の土手にはまだまだ在来種の植生が残っていることを確認できました。
やはりよほどの知識と意識を持ち、守っていく環境を整えない限り、なかなか在来種を
守っていくことは、難しいことを痛感しました。
この貴重な経験は、馬頭での植生調査結果と合わせて、我々チームの貴重なデータに
なるはずです。


気を取り直して、畑を後に、澤井さん宅に。
いつも笑顔のお母さんに招き入れられて、春炬燵ならぬ初夏炬燵に入って、しばしお茶話。
高齢化と過疎化の進行は深刻ですが、それでも、里の暮らしを都会の人たちに味わって
もらうため農家民泊制度もスタートし、お母さんはその準備に追われていました。
「せっかくのご縁を無くするのはとてもさびしい。これからも来てくださいね」。
いつものことながら、帰り際には、両手に手づくりのカキ餅や蕗、筍の佃煮など里のごちそうを
ぶら下げていました。


私たちが畑を尋ねたのは、計5回。全くの飛び込みでスタートした畑での活動でしたが、
棚田という特殊な環境での4年間の植生調査は、これからの関西での活動に伝えていく
貴重な内容です。
いつも山で歩き回ると元気になるという宮脇さん、畑の様子をいつも細かく報告しれくれた松本さん......。
在来植物はもちろん、そこで出会う在来生活、在来びととのつながりも、5×緑が伝えていく
使命の一つだと痛感しました。


http://www.shoei-web.co.jp/news/20100207.htm

 

 

 

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田植えが終わったばかりの棚田
多くのアマチュアカメラマンがやってくるのも納得の風景

 

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畑の具合をチェックする宮脇さん

 

 

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土手部分はアゼターフの採取に適する植生が確認できる

 

 

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畑の中には在来種に混じってヒメジオンなどの外来植物がかなり増えていた

 

2010-06-02 (Wed)

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