活動レポート&里山便り

森の未来に出会う旅 その2

先月の記事には人工林の団地での様子をレポートしましたが
今回は、人工林から伐り出された原木の市場の様子です。

山を降りた私たちは、嶺北木材市場へ向かいました。

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山から伐り出された木は、市場に集められ、取引されます。
全国各地のハウスメーカーなどからも買い付けにくるそうです。

嶺北の杉の特徴は、中心部のうすいピンク色。(写真では色が出ていないのですが)
このピンクの杉は、水に強いので、お風呂場など水回りによく使われるそうです。

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そして、ここに集められた原木には、「SGEC」のラベルが貼られています。

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SGECは、日本独自の森林認証です。(国際的な森林認証としてはFSCが有名です)
「緑の循環」認証会議という独立した第三者機関によって
持続可能な森林経営、管理を認証しています。

嶺北では、地域全体でこのSGEC認証の取得を目指し、平成19年に
約4千ヘクタールの認証取得と、認証材を扱う事業体の認定を取得しています。

このような認証取得を目指す背景には、もちろん環境に配慮した
森林管理を徹底するという目的もありますが、市場での競争力を高めたい
という意図もあります。

木造建築が一般的であった昔に比べると、国産の木材の需要は圧倒的に
減少しています。また、安価な外国産の木材輸入が一般化したことにより
国産木材の市場価格も下落しています。これもまた、林業が低迷している
大きな原因です。山から気を伐って運び出すには、コストがかかります。
それを市場で売ったとしても、コストを回収できなければ
伐るよりも放置したほうがよい、ということになってしまいます。

これは本当に頭の痛い問題です。
嶺北でも、なんとかして木材のフェアトレードが可能にならないかと
いろいろと新しいアイデアを模索しているところです。


その1に書いたことをもう一度思い出してみます。
このまま人工林を放置すると、山はどんどん死んでいきます。
山に宿る美しい生物たちの世界も失われていきます。
土砂災害などの危険性も増加します。
今の日本では「木は切らなくてはいけない」のです。

なのに今、国産木材は市場で優位な立場にありません。

山の仕事をする嶺北の皆さんが一生懸命新しい道を模索するのと並行して
消費者である私たちも新しい道を考えてみる必要があるのでは、と思います。
家具を買うとき、家を建てるとき、部屋を選ぶとき、値段や見た目だけで
なく、そこで使われている素材のことを思い浮かべてみる余裕が欲しいです。
その素材の背景にあるもの、それを選ぶことの意味。

個人的な話になりますが、実家のリフォームにあたり、大工さんに
高知県産の杉と檜を指定して、柱や床板に使ってもらいました。
杉は心地良い温かさが伝わってくる木材なのですが、そこに
手を触れていると、将太くんに連れていってもらった「良い森」の
風景を思い出すことができます。

5×緑の里山ユニットも、眺めていただくことで、日本人の心の風景である
里山を思い浮かべてホッとしていただけることを願って作られています。
国産木材の家や家具も同じように、そこに住む人、使う人の心に、
日本人が古代から受け継いできた山の風景が宿るのではないかと思います。


次回は、製材工場の様子や、嶺北の木材を売り出すための
新しい取り組みについてレポートしたいと思います。


取材・執筆:宮垣 翠 (5×緑スタッフ)





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