ビルの各階のテラスに金網の植栽基盤を使った緑化が並んでいるのをよく見かけるようになりました。
この方式は、5×緑の緑化技術の生みの親である、ランドスケープアーキテクトの田瀬理夫さんが草分けです。
そうしたこともあって、5×緑は当初からビルの庇上の緑を様々手がけてきました。
その多くは「事前育成方式」です。
これは、緑化ユニットの製作圃場「5×緑BASE」(神奈川県平塚市)で、植物の植え付けまで完了し、現場では設置のみ行うという方式です。
この方式によって、次のようなメリットが生まれます。
*現場の工期が大幅に短縮できる。
*事前育成期間を長く取ることができれば、緑量を増やして現場に持ち込める。
*工事の季節や工期を気にせず、よい時期に丁寧に植え付けできる。
庇上緑化のご質問を受けることが多いので、要点をまとめてみました。
5×緑の緑化ユニットは、標準品、規格サイズはありません。
各現場に合わせて設計します。
割り付けも、庇の延長その他に合わせて最適なサイズで行います。
ただ、植栽済みの緑化ユニットを運搬するため、道路の高さ制限により「事前育成方式」を採用できるのは全高2m程度までとなります。
また、重機の使用可否などによって重量も制限を受けます。
制限以上の大きさのものは、現場で金網を組んで植える「現場施工方式」になります。
緑化ユニットには、ほとんどの場合自動潅水装置がセットされます。
地植えとは違ってプランター状ですので、潅水の孔のピッチに留意が必要です。
水は底から滴下しますので建物側で排水を取る事が必要です。
その際のドレーンは、たまった落ち葉を容易に掃除できるように計画されているとオーバーフローなどを心配しないですみます。
緑化ユニットは、パラペットや手すりの内側に置かれることもありますが、パラペットのない庇の端部に置かれることも増えています。
これは、側面植栽のできる5×緑の特長を生かして、立ち上がりから緑にするものです。
こうした場合は、床にアンカーで固定します。
庇上の緑化ユニットで苦労するのはレベルの調整です。
水勾配のある床で天端を水平にしようとすると、底下にスペーサーなどを入れて調整する必要があります。
施工性や見栄えを考えると、緑化ユニットの設置範囲に捨てコンを打つなど、あらかじめ水平を取れるような床になっていることは有効です。
また、メンテナンスに必要なスペース(600以上)が確保されていることも重要です。
剪定は、自然樹形を保てるよう枝抜き剪定を中心に行います。
緑化ユニットのサイズは上に植える植物の根鉢の大きさで決まります。
根鉢の周りに余裕があり、植物たちが根を伸ばしていくことができれば元気に育ちます。
ただ、5×緑の緑化ユニットには、アクアソイルが使われており、密度の高い植栽が可能で、思ったよりも小さなサイズで豊かな緑量を獲得することができます。
5×緑の緑化ユニットを構成するのは、その地域の在来の植物です。
里山の風景を写すような気分でつくります。
一つのビルで、樹種は50から100種類近くになります。
そうすることで、植栽に柔らかな標準が生まれ、変化に富んだ、季節感豊かな緑になります。



