温泉街に春を告げる里山ユニット――山形 天童温泉の取り組み

将棋駒の文化で知られる天童の温泉街に里山ユニットをお届けしました。
温泉街をそぞろ歩くと、あちらこちらに点在する里山ユニットが春を告げています。

温泉街全体にお届けした里山ユニットは、全部で61基。
地域の潜在自然植生や、地元のシンボルともいえる舞鶴山の植生をもとに、ケンポナシやハイイヌツゲ、オオバクロモジ、ミヤマガマズミなど80種類ほどの植物でつくられています。

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天童温泉では、令和3年度から観光庁の補助事業「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」の採択を受け、「ユニバーサルデザイン」をテーマにまちづくりに取り組んできました。

温泉街には規模やスタイルの異なる旅館が11軒、飲食店は約150件が集積しています。
各事業者がバラバラに取り組むのではなく、地域が一体となって「ユニバーサルデザイン」という一つのテーマでエリアの価値を高めてきました。
事業に参画した旅館や飲食店はトイレや客室、浴室、段差などユニバーサルデザインへ改修を実現しました。その先には観光客、地域住民、年齢、性別、文化、身体の状況など、さまざまな個性や違いにかかわらず、誰もが利用しやすく、居心地の良い環境となるよう、まちや建物、もの、しくみ、サービスなどを提供することを目標に掲げています。

旅館だけでなく、地域の金融機関や大学も協力。
昨年度の令和4年度観光庁「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」では、一昨年より多くの旅館、飲食店が事業に手を挙げました。

そんななか「高度経済成長期を経て各施設がバラバラに開発され、温泉情緒が希薄になった」ことから、かつての風景を取り戻すための景観づくりが次なる課題になっています。

建築家の結城光正さん(東京藝術大学 キャンパスグランドデザイン推進室 特任准教授)が、景観デザイン専門委員として就任。共に数年前から進めているまちづくりの統一テーマ「天童の森構想」のもと景観づくりを推進されています。
塀の色合いを統一したり、周遊性を高める手湯やベンチのあるスポット、歴史を記したサインの設置など、少しずつ思いが形になってきています。

結城先生が、温泉組合のみなさまと5×緑を繋げてくださり、里山ユニットの導入にあたっては説明会を開くことができました。
設置後には、植物の世話の説明に一軒一軒回る機会もいただけました。
印象的であったのは、「植物たちが故郷の植物、昔からこの地域にある植物です」とお伝えしたときの皆さんの表情の変化です。
天童の皆さんの故郷愛を感じると共に、ただどこかで買ってきただけのプランターでなくなる瞬間に立ち会えたように思いました。

温泉街を訪れた方々が天童の豊かな自然へと心を開く、そんな役割を果たしてくれることを祈っています。

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