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■コラム

環境時代の緑化装置 里山の植生を生かした緑のキューブ
株式会社アネックス 5×緑事業部 宮田生美

1、緑の面積を5倍にする新しいデザイン 

 

「5×緑」と書いて「ゴバイミドリ」と読む。直方体の上面だけでなく、4側面も植栽することで、緑のキューブができあがる。土地の狭い都会でも立体化すれば緑化面積は5倍。そこからこの名前が付けられた。

5×緑は側面植栽用に開発された堅牢なフトンカゴ(直方体の金網)に、保水性が高く、軽量で劣化の少ない人工土壌を充填して植生基盤をつくり、上面と4側面に植物を植えている。

 

このシステムの原形は1995年に竣工した「アクロス福岡」に遡る。

高さ60mのビルの壁面を階段状にして、そこにステップガーデンをつくる。

総面積0.8haの緑を60年以上に渡って維持できるシステムの構築。それがこのプロジェクトの課題だった。

このプロジェクトを手がけた(株)プランタゴ代表 田瀬理夫氏のコンセプトは「花鳥風月の山」。

単なる「公園」ではなく福岡の市街地の真ん中に「山」を出現させる。

そのために70種類以上の九州在来の植物が植えられ(現在では約120種)、年間を通してほぼ雨水のみ、薬剤を使うことなく緑が維持可能なエコロジカルなシステムができあがった。

以来、田瀬氏を中心に改良・進化を続けてきたシステムを標準化し、製品化したものが5×緑である。

 

2、里山の環境保全につながる仕組み

 

5×緑で使う植物はほとんど「在来種」である。

植栽する植物は、茨城と、福島にある協力ナーセリー(圃場)で育成されている。

ナーセリーの地元や圃場内の親木から種を採取して発芽させた実生苗と、親木から枝を採取して育てた挿し木苗を基本としている。

すなわち「この木の親はこれ」と来歴のわかる植物をなるべく使うようにしているのである。

5×緑の植物に対する考え方を象徴するものが「アゼターフ」である。

「アゼターフ」とは、田の畦道にあるような植物を混植した植生マットのことで、34cm×48cm、厚さ約5cmのマットの上に15種類以上の里山の草花が植えられている。

 

昨年の夏、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅前に設置したTRAFFIC CUBE(緑化ガードレール)の上面植栽にも、この「アゼターフ」が使われている。

 

日本の原風景ともいえる里山の景観が壊れ始めてから久しい。

秋の七草さえ、レッドデータブックに載る現在、かつて当たり前にあった美しい日本の風景を私たちはこのまま失ってしまうのではないかと思う。

多種類の植物が織りなす里山の風景は、里人の手で草刈りされることで維持される。

けれども今は、除草剤や帰化植物の影響、農村の高齢化や人手不足で、昔のような畦の残る美田は本当に少なくなってしまった。

 

「アゼターフ」は、周辺の里山の風景も美しい福島県のナーセリーでつくられている。周りの山から手取りで種を集め、薬剤を使うことなく植物マットを生産している。

種は全て地域の山のものに限られ、いわばこのエリアの植物のシーズバンクのような役割を果たしている。また、地元の行政とも協力して里山の環境を守る活動を行っている。

 

日本の自然の豊かさは、その多様性にあると言われる。

けれども、都市化によって都会の緑はその量だけでなく種類も少なくなってしまった。

5×緑は、都市にできる限り、かつての多様な植生を取り戻すことを目指している。都市で使われる植物は地方の里山で育てられる。つまり、都市に緑を取り戻すことが里山の環境保全にもつながっているのだ。

<都市と里山の環>は5×緑の基本理念である。

 

3、つくばエクスプレス駅前の緑のガードレール

 

5×緑のキューブは、元々個人の方にも里山の植物を楽しんでもらいたい、という思いから開発された。

30cmや40cmのキューブ、もしくは横長のユニットを並べて置くだけで、ベランダや庭先に緑の空間ができる。

一方、この形状を生かしたユニークな活用例が生まれてきている。

そのひとつが、先述した「柏の葉キャンパス」駅前のガードレールである。

横120cm×奥行80cm×高さ60cmの直方体の側面にテイカカズラ、上面にアゼターフを施した。強度実験によって歩行者自転車用防護柵の「P基準」を満たしている。(特許出願中)

昨年8月24日の開通時期は、丁度秋の草花が盛りの頃で、キキョウ、カワラナデシコ、ミソハギ、オミナエシなどが咲き揃い、華やかではないが、楚々とした可憐さで駅のオープンを演出した。

また、日本郵政公社の新東京郵便局新棟増築プロジェクトでは、屋根の全面を緑で覆う従来の屋上緑化手法では、コスト的にも荷重的にも不可能なことから、屋根に緑のキューブを点在させることによって緑化する独自のシステムを開発(日本郵政公社と共同特許出願中)。これによって区の緑化条例をクリアした。

この緑化手法は、植物生育上極めて厳しい条件下で取り組んだ実験的色彩の濃いものであり、それだけに新たな緑化のスタイルを提案することにつながった。

フトンカゴを用いたこの工法は、デザインの自由度が高く、この他にも傾斜屋根の緑化や壁面緑化、高木プランター、緑の階段や橋など、様々な実績を持っている。

 

どんな都市のスーパーストラクチャーの中にあっても、在来種で構成された緑は優しい。どこか人の心を和ます懐かしい緑である。

つくばエクスプレスの駅前を歩く年輩の女性3人組が、緑のガードレールの前で足を止めて「あら、これオミナエシ?懐かしいわねぇ」と言って携帯で写真を撮っていたのが印象的だった。

CO2の削減やヒートアイランド対策に、緑化施策はますます重要になるが、緑が人々の心に与える影響も大きいのではないだろうか。

 

5×緑では今、この優しい緑が高齢者の施設や病院で力を発揮するのではないかと考え、そのような場所で活かされることを願っている。

 

 
5面を緑化した緑のキューブ

アクロス福岡


 

 


アゼターフ

 

 

 





 









 

 

 







 

 

 


つくばエクスプレス駅前のガードレール

野草が駅前空間を飾る


 

日本郵政公社仕分棟の屋上緑化

 

 

 

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